「知的財産立国」の実現を目指して


 政府は、2002年より国家プロジェクトとして「知的財産立国」の実現を目指し、様々な施策を進めています。今後、知的財産権制度の活用について、日本国経済の活性化だけではなく、企業や大学・研究機関においても重要な位置を占めることになります。

※ 「知的財産立国」とは、発明・創作を尊重するという国の方向を明らかにし、ものづくりに加えて、技術、デザイン、ブランドや音楽・映画等のコンテンツといった価値ある「情報づくり」、すなわち無形資産の創造を産業の基盤に据えることにより、我が国経済・社会の再活性化を図るというビジョンに裏打ちされた国家戦略である。(2002年7月「知的財産戦略大綱」)

中小企業知財経営支援金融機能活用促進事業

 金融庁は特許庁と連携して、地方銀行、信用金庫、信用組合などを対象に2014年より実施してきた「中小企業等知財金融促進事業」を継承する新事業として、2019年より「中小企業知財経営支援金融機能活用促進事業」を創設。
 金融庁方針による知財金融とは、企業の担保や倒産確率の評価だけでなく、中小企業の成長力を精査する事業性評価への取り組みのひとつです。中小企業の事業力強化、売り上げUP、新製品開発、新業界進出、下請け脱却、事業承継、企業再生など知財が絡む課題に対し、金融機関を介した知財経営の推進、普及を目指しています。

中小企業の知的財産に対する支援

 中小企業庁では、知的財産に関する取組みや模倣品被害の対策など、中小企業の知的財産戦略を支援しています。

中小企業知的財産活動支援事業費補助金(中小企業等外国出願支援事業)

 経済のグローバル化に伴い、中小企業においても海外進出が進んでいます。一方 、知的財産権は国ごとに独立しているため、発明について日本で特許を取得したり、製品の名称について商標を登録したりしても、外国では権利として成立せず、進出先においても特許権や商標権等は国ごとに取得する必要があります。進出先での特許権や商標権の取得は、企業の独自の技術力やブランドの裏付けとなり海外でも事業展開を進めることに有益であるとともに、模倣被害への対策に有効で、商標等を他社に先取りされ自社ブランドが使用できなくなるリスクを回避できます。
 しかし、外国出願費用をはじめとする海外での知的財産活動費は高額であり、資力に乏しい中小企業にとっては大きな負担となっています。
 特許庁では、中小企業の戦略的な外国出願を促進するため、外国への事業展開等を計画している中小企業等に対し、外国出願にかかる費用の半額を助成しています。 独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)と各都道府県等中小企業支援センター等が窓口となり、全国の中小企業の皆様が支援を受けることができます。地域団体商標の外国出願については商工会議所、商工会、NPO法人等も応募できます。また、意匠においては、「ハーグ協定に基づく意匠の国際出願」も支援対象です。

日本企業の99.7%を占める中小企業

 経済活動のグローバル化など社会の発展に伴い、発明や技術などの知的創造物を保護する「知的財産権」の考え方が重視されてきています。
 政府の「知的財産推進計画」においても、中小企業における知財戦略の推進を図ることとされており、自社の知的財産を活用していくためにも、各企業は知的財産権について正しく理解しておくことが必要です。
 中小企業が知的財産権を活用していくことは、経済の活性化や日本全体の競争力の底上げにもつながると考えられており、政府も中小企業における知財戦略の推進に積極的に取り組むこととしています。
 企業においても知的財産権制度をしっかりと理解し、戦略的に知的財産権を取得・活用していくことが大切です。

知的財産とは


  • 特許
  • 実用新案
  • 意匠
  • 商標
  • 著作権
  • 種苗法
  • PCT
  • 不正競争防止法(情報管理、営業秘密)
  • 独占禁止法

知財戦略を持つことによるメリット


 知財戦略を持ち、自社の独自技術について知的財産権を取得できれば、その市場への他社の参入を防ぎ、自社の優位性を保つことができます。さらに改良を重ねれば、市場拡大も可能となるでしょう。
 また、他社にライセンス(権利の使用許諾)を与えることでロイヤリティ(使用許諾を与えることによる対価)を得るなど知的財産権を活用することで、さらなる収益の拡大も見込めます。仮に事業をやめてしまう場合でも、知的財産権を他社に譲渡することにより利益を得ることができます。
 自社の知的財産を活用し、事業の発展と利益の拡大を目指す知財戦略は、経営資源が少ない中小企業こそ必要です。

知財戦略を持たないデメリット


一方、知財戦略を持たず、知的財産権を取得していないという場合、様々なデメリットが発生する可能性があります。
 まず、中小企業は大企業と比べると技術や製品の数が少ない場合が一般的です。その大事な技術や製品が、大企業や、安く製造できる外国企業などに模倣され、市場に参入されてしまうと、自社の市場規模が縮小したり、最悪の場合は廃業に至ったりする恐れもあるなど、自社の経営に与える影響は大きなものとなります。
 また、新技術や新商品の開発の段階においても、知財戦略を持たずに闇雲に開発した場合、出来上がった技術や製品が他社の知的財産権を侵害する可能性があります。その場合、開発への投資は全て無駄となるうえに、損害賠償を請求される恐れもあります。

「知らない」では済まされない!


 「知的財産権」について、「自分には関係ない」と思っている経営者の方も多いと思いますが、事業を行う中で他社の知的財産権を知らず知らずのうちに侵害してしまうという事は、あり得る事です。
 例えば、新しい商品を、さわやかな名前という事で「朝のしずく」として、販売していたところ、他社が先に商標権を取得していたため、商品名を変更しなければならなくなるばかりではなく、在庫の回収や、損害賠償の請求の対象となることもあります。
 また、商品やサービスに於いても、特許権や意匠権などの侵害のケースが考えられます。
 この様に、知的財産権を知らないでは、ビジネスが出来ない時代です。